特別連載「高市内閣諸政策」第五回:ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)
令和8年6月22日
ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)とは~すべての人に、質の高い医療を~
今回は、少子高齢化問題に喘ぐ日本にとって、喫緊の課題となっている医療問題について、皆様と共に考えるために、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)の意義も交えながら、紹介します。国際社会における我が国のこの分野での取組は、特にカメルーン、チャド、中央アフリカを含めたアフリカ諸国の医療事情の改善に大きく貢献しています。
1 UHCハイレベルフォーラム2025
(1)2025年12月、東京において「UHCハイレベルフォーラム2025」が開催されました。世界銀行のバンガ総裁、WHOのテドロス事務局長、各国の財務・保健大臣が参集したこの場で、高市早苗総理大臣はビデオメッセージを通じて、日本の強いコミットメントを発信しました。
(2)高市総理は、UHCを「人間一人一人の生存・生活・尊厳を守るとともに、健康な労働力に支えられた持続的な経済成長を実現するために不可欠なもの」と明確に位置づけ、日本が積み上げてきた経験を世界と共有する意義を強調しました。
2 UHCとは?――背景と問題
(1)世界では数十億人が必要な医療サービスを十分に受けられない状況に置かれています。経済的な理由から受診をあきらめて病気が重症化する人、医療費の支払いのために家族が貧困に陥る人――こうした「医療の不平等」は、先進国・途上国を問わない世界共通の課題です。
(2)医療を受けられないことで病気が悪化し、収入が失われ、さらに医療が遠ざかる。この「貧困と疾病の悪循環」を断ち切ることがUHCの使命です。UHCとは、「すべての人が、必要な質の高い保健サービスを、費用的な困難なしに受けられる状態」を指します。予防・治療・リハビリにいたる包括的なサービスへのアクセスと、医療費による家計破綻を防ぐ財政保護の両立が求められます。
3 歴史的経緯
UHCの理念の原点は、1948年のWHO憲章の「到達しうる最高水準の健康を享受することは、すべての人の基本的権利である」という宣言にあります。2005年のWHO総会での正式決議を経て、2015年には国連のSDGs目標3の中核ターゲット(3.8)として明記され、2030年までの達成が世界共通の目標となりました。2020年以降の新型コロナウイルスのパンデミックは各国の保健システムの脆弱性を世界に示し、UHC強化の重要性がいっそう強まりました。
4 日本の取り組み
(1)日本は1961年に国民皆保険・国民皆年金を達成し、世界に先駆けてUHCを実現した国として国際社会から高く評価されています。フリーアクセス・抑制された自己負担・高額療養費制度・介護保険制度が組み合わさった重層的なセーフティネットは、日本が世界トップクラスの健康水準を誇る基盤となっています。高市総理も強調するように、国民皆保険の達成は「健康な労働力に支えられた良質な雇用と持続的な経済成長」という好循環を生み出し、日本の高度経済成長と社会の安定を支えてきました。この経験と知見を国際社会と共有し、開発途上国の制度構築を支援することが、日本の国際保健外交の根幹となっています。
(2)日本はUHCの「発信国」として、国際社会のアジェンダ形成を積極的に主導してきました。2017年には東京でUHCに関する国際会議を開催し、2019年のG20大阪サミットでは財務大臣と保健大臣による初の合同セッションを実現するなど、財政・保健当局間の連携という新たな国際的潮流を生み出しました。2023年5月のG7広島サミットでは、保健分野における幅広い課題強化が確認され、日本のリーダーシップが国際社会で改めて示されました。
(3)こうした取り組みの中で、日本が特に重点を置いてきた地域の一つがアフリカです。日本はJICAを通じ、アフリカ各国の保健システム強化に長年取り組んできました。医療人材の育成支援、地域保健の底上げ、母子保健・感染症対策への技術・資金協力を継続的に実施しています。また、TICAD(アフリカ開発会議)は日本とアフリカが開発課題を議論する重要な枠組みであり、2025年に横浜で開催されたTICAD9では、UHCの推進が中核議題として位置づけられ、予防接種体制の強化や保健財政基盤の整備などが重視されました。加えて、日本によるグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)への継続的拠出は、アフリカにおける感染症対策とUHC達成に大きく貢献しています。さらに、2025年12月のUHCハイレベルフォーラムにおいて東京に設立された「UHCナレッジハブ」は、アフリカを含む開発途上国の財務・保健当局者の人材育成を通じて、持続可能な保健財政の構築を実践的に支援する国際的拠点として機能しています。
5 残された課題
日本国内においても、少子高齢化による医療・介護費の増大、地域間の医療格差、人材不足など、皆保険制度の持続可能性をめぐる課題は山積しています。日本が培ってきたUHCの経験を世界、とりわけアフリカをはじめとする開発途上国と共有しながら、自国の制度をいかに守り発展させていくか――その問いへの答えを出し、具体的な実践に移し成果に繋げることが、日本に課せられた責務といえます。
今回は、少子高齢化問題に喘ぐ日本にとって、喫緊の課題となっている医療問題について、皆様と共に考えるために、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)の意義も交えながら、紹介します。国際社会における我が国のこの分野での取組は、特にカメルーン、チャド、中央アフリカを含めたアフリカ諸国の医療事情の改善に大きく貢献しています。
1 UHCハイレベルフォーラム2025
(1)2025年12月、東京において「UHCハイレベルフォーラム2025」が開催されました。世界銀行のバンガ総裁、WHOのテドロス事務局長、各国の財務・保健大臣が参集したこの場で、高市早苗総理大臣はビデオメッセージを通じて、日本の強いコミットメントを発信しました。
(2)高市総理は、UHCを「人間一人一人の生存・生活・尊厳を守るとともに、健康な労働力に支えられた持続的な経済成長を実現するために不可欠なもの」と明確に位置づけ、日本が積み上げてきた経験を世界と共有する意義を強調しました。
2 UHCとは?――背景と問題
(1)世界では数十億人が必要な医療サービスを十分に受けられない状況に置かれています。経済的な理由から受診をあきらめて病気が重症化する人、医療費の支払いのために家族が貧困に陥る人――こうした「医療の不平等」は、先進国・途上国を問わない世界共通の課題です。
(2)医療を受けられないことで病気が悪化し、収入が失われ、さらに医療が遠ざかる。この「貧困と疾病の悪循環」を断ち切ることがUHCの使命です。UHCとは、「すべての人が、必要な質の高い保健サービスを、費用的な困難なしに受けられる状態」を指します。予防・治療・リハビリにいたる包括的なサービスへのアクセスと、医療費による家計破綻を防ぐ財政保護の両立が求められます。
3 歴史的経緯
UHCの理念の原点は、1948年のWHO憲章の「到達しうる最高水準の健康を享受することは、すべての人の基本的権利である」という宣言にあります。2005年のWHO総会での正式決議を経て、2015年には国連のSDGs目標3の中核ターゲット(3.8)として明記され、2030年までの達成が世界共通の目標となりました。2020年以降の新型コロナウイルスのパンデミックは各国の保健システムの脆弱性を世界に示し、UHC強化の重要性がいっそう強まりました。
4 日本の取り組み
(1)日本は1961年に国民皆保険・国民皆年金を達成し、世界に先駆けてUHCを実現した国として国際社会から高く評価されています。フリーアクセス・抑制された自己負担・高額療養費制度・介護保険制度が組み合わさった重層的なセーフティネットは、日本が世界トップクラスの健康水準を誇る基盤となっています。高市総理も強調するように、国民皆保険の達成は「健康な労働力に支えられた良質な雇用と持続的な経済成長」という好循環を生み出し、日本の高度経済成長と社会の安定を支えてきました。この経験と知見を国際社会と共有し、開発途上国の制度構築を支援することが、日本の国際保健外交の根幹となっています。
(2)日本はUHCの「発信国」として、国際社会のアジェンダ形成を積極的に主導してきました。2017年には東京でUHCに関する国際会議を開催し、2019年のG20大阪サミットでは財務大臣と保健大臣による初の合同セッションを実現するなど、財政・保健当局間の連携という新たな国際的潮流を生み出しました。2023年5月のG7広島サミットでは、保健分野における幅広い課題強化が確認され、日本のリーダーシップが国際社会で改めて示されました。
(3)こうした取り組みの中で、日本が特に重点を置いてきた地域の一つがアフリカです。日本はJICAを通じ、アフリカ各国の保健システム強化に長年取り組んできました。医療人材の育成支援、地域保健の底上げ、母子保健・感染症対策への技術・資金協力を継続的に実施しています。また、TICAD(アフリカ開発会議)は日本とアフリカが開発課題を議論する重要な枠組みであり、2025年に横浜で開催されたTICAD9では、UHCの推進が中核議題として位置づけられ、予防接種体制の強化や保健財政基盤の整備などが重視されました。加えて、日本によるグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)への継続的拠出は、アフリカにおける感染症対策とUHC達成に大きく貢献しています。さらに、2025年12月のUHCハイレベルフォーラムにおいて東京に設立された「UHCナレッジハブ」は、アフリカを含む開発途上国の財務・保健当局者の人材育成を通じて、持続可能な保健財政の構築を実践的に支援する国際的拠点として機能しています。
5 残された課題
日本国内においても、少子高齢化による医療・介護費の増大、地域間の医療格差、人材不足など、皆保険制度の持続可能性をめぐる課題は山積しています。日本が培ってきたUHCの経験を世界、とりわけアフリカをはじめとする開発途上国と共有しながら、自国の制度をいかに守り発展させていくか――その問いへの答えを出し、具体的な実践に移し成果に繋げることが、日本に課せられた責務といえます。
「健康をすべての人に届ける未来を、皆様と力を合わせて築いてまいる決意です。」
――高市早苗内閣総理大臣(UHCハイレベルフォーラム2025、令和7年12月)